1人月とは – IT業界の工数管理における基本単位
1人月とは、1人が1ヶ月間に処理できる作業量を示す工数の単位です。
IT業界では開発や保守プロジェクトの見積もりで広く使われており、通常は1日8時間×20営業日=160時間を基準として計算されます。
プロジェクト管理において、「この機能開発には5人月必要」と表現することで、5人で1ヶ月、または1人で5ヶ月かかる作業規模であることを簡潔に示せます。
この概念は、複雑なITプロジェクトの規模感を把握し、必要な人員や期間を算出する際の基本単位として機能しています。
なぜ人月概念が生まれたのか
人月という概念が生まれた背景には、ITプロジェクトの大規模化と分業化があります。複数人で行う作業の規模やコストを単純化して表現する必要性が高まったため、時間単位だけでなく月単位でのリソース把握が求められるようになりました。
従来の時間管理(人時・人日)から人月による管理へ移行することで、計画や見積もりが概念的に扱いやすくなりました。また、国際的なプロジェクト管理手法とも整合しやすく、Man-Month(M/M)という表記で海外でも通用する標準的な単位として定着しています。
人月計算の実際と注意点
人月を理解する上で重要なのは、稼働時間と実働時間の違いです。稼働時間は就業時間を指しますが、実働時間は実際の作業に割ける時間を意味します。会議や教育、雑務などにより実働時間は稼働時間より少なくなるため、見積もり時にはこの差を考慮する必要があります。
一般的に「1人月」は20〜22営業日、1日8時間の前提で160〜176時間として扱われます。しかし、チームメンバーのスキルや経験によって同じ作業でも必要工数が変わるため、シニアとジュニアで係数を掛け分けるなどの調整が行われます。
作業分解(WBS)と個別の生産性係数を活用することで、実務ベースでの見積もり精度を向上させることが可能です。
ビジネスにおける人月の重要性
人月はプロジェクト管理において多面的な重要性を持っています。まず、プロジェクト予算は人月数に人月単価を掛け合わせることで算出されるため、正確な人月見積もりはコスト計画の基盤となります。
リソース配分や人員計画では、人月を基にどの時期に何人を投入するかを決定し、人員の過不足を防ぐことができます。顧客への見積もり提示においても「何人月で対応するか」を明示することで、交渉や比較が容易になります。
進捗管理の観点では、実績人月と予定人月を対比することで遅延や工数超過を早期に検出できます。これにより、コスト管理や収益性分析への貢献が期待され、プロジェクト別の利益率把握にも活用されています。
工数とは何かとの関係性
「工数」は特定作業に必要な時間を指す広義の用語で、1人月はそのうち月単位で表したものと位置づけられます。作業工数の詳細見積もりでは人時や人日を使い分け、上位概念として人月はプロジェクト規模把握や契約単位で用いられることが多くなっています。
時間ベースの管理は以下のように使い分けられます:
- 人時間:1人×1時間、短期タスクや細かな進捗管理に適用
- 人日:1人×1日(通常8時間)、中期的な作業計画に使用
- 人月:約20人日に相当、中長期の計画や見積もりに最適
適切な単位選択のガイドラインとしては、見積もりの粒度と管理対象の期間に応じて「人時間→人日→人月」と切り替えることが推奨されます。工数管理の効果的な運用には、プロジェクトの性質や規模に応じた適切な単位の選択が重要となっています。
