アジア圏AMSプロバイダー 完全チェックリスト&トップ5ベンダー

前回の記事では、 アプリケーション・マネージド・サービス(AMS)とは何か、その主なメリット、そしてどのような企業に最も効果的か をご紹介しました。もし、貴社のIT戦略にAMSを組み込むことを決定されたなら、次の重要な意思決定は、適切な AMSプロバイダーの選定です。この選択は、アプリケーションのパフォーマンス、運用コスト、そしてチームの生産性に重大な影響を及ぼします。

なぜなら、すべてのプロバイダーが同じ価値を提供するわけではなく、間違った選択をすると、サービスの中断、予算超過、コンプライアンスリスクにつながる可能性があるからです。

したがって、コスト最適化を目指すCIO、アプリケーション性能向上を求めるCTO、あるいはデジタルトランスフォーメーション(DX)を計画するITディレクターの皆様は、以下の検討事項をぜひチェックしてください。

  • 体系的な評価フレームワークの活用
  • 主要なグローバルAMSプロバイダーの比較
  • 想定される料金モデルとコスト構造
  • ベンダーとの良好な関係構築のためのベストプラクティス

この包括的なガイドを、貴社のパートナーシップに関する正確な意思決定を行うための実践的なフレームワークとしてご活用ください。

ベンダー選定を誤った際のリスク:単なるコスト以上の問題

全てのプロバイダーが同じ価値を提供するわけではありません。誤った選択は、初期コストを超えたさまざまな問題を引き起こします。これらのリスクを理解することで、評価の「見落とし」を防ぎ、高額な失敗を回避できます。

財務的影響と隠れたコスト

誤ったベンダー選定は、本来含まれていると想定していたアプリケーション開発・管理サービスに対する予期せぬ請求により、予算超過につながることがよくあります。変更依頼、追加ライセンス、対応範囲外のサポートなどにより、見積もりを30〜50%上回るコストが発生することも珍しくありません。

さらに、ベンダー切り替えコストが追い打ちをかけます。移行費用、ナレッジトランスファー、そして切り替え期間中のサービス中断が重なると、エンタープライズアプリケーションでは数百万円〜数千万円単位の甚大な損失に膨らむ可能性があるのです。

そのため、 マネージドサービス(MS)や特にAMSに対して、明確な料金体系を持つベンダーを探すべきです。

業務の中断とサービス品質の問題

技術力が不十分なAMSプロバイダーは、サービスレベルの維持に苦労し、頻繁な障害や解決時間の延長を引き起こします。

ンシデント対応の手順が不十分な場合、適切なエスカレーションプロトコルがない、またはタイムゾーンに合わせた適切な人員配置がないと、問題が連鎖的に発生します。30〜60分の対応遅延が、軽微な問題をビジネスに影響を及ぼす危機へと変貌させることがあります。

そのため、ITILなどの認証を持つMSP(マネージドサービスプロバイダー)は常に信頼できる選択肢となります。

セキュリティ脆弱性とコンプライアンス違反

セキュリティ対策が脆弱なAMSプロバイダーは、組織を情報漏洩のリスクにさらします。これによるコストは、全世界平均で444万ドル(約6億円)にも上り、評判への損害は含まれていません。

さらに、GDPRでは最大2,000万ユーロまたは年間グローバル売上の4%HIPAAでは違反カテゴリごとに年間最大213万ドルの罰金が課せられます。

アジアでも、たとえば日本のAPPI(個人情報保護法)の罰金が最大1億円(約70万ドル)に、シンガポールのPDPAは最大100万ドルまたは年間売上高の10%に達する可能性があります。

顧客やステークホルダーは、社内ITと外部ベンダーを区別しません。彼らは「失敗したサービス」として一括りに見なします。つまり、ベンダー由来の問題であっても、コンプライアンス違反に対する最終責任は貴社が負うことになります。

このため、貴社のターゲット市場における法規制やコンプライアンス対応経験を持つベンダーを探すことが賢明です。

文化的ミスマッチとコミュニケーションの課題

これは、地元ベンダーを優先する従来の傾向により、しばしば見落とされがちです。しかし、コストや専門性の利点から、今やベンダーはどの国からでも参入してくる可能性があります。これにより、カルチャーアライメント(文化的一致)がチェックリストの必須項目となります。

貴社とプロバイダー間で互換性のない作業スタイルは、協力関係を損なう摩擦を生み出します。コミュニケーションの好み、意思決定プロセス、問題解決のアプローチが貴社の文化と衝突すると、協業の効率が著しく低下します。

プロバイダーの主要な勤務時間外に重要な問題が発生し、そこにタイムゾーンの違いや言語の壁が重なると、これらの課題はさらに複雑化します。

戦略的制約とイノベーションの停滞

単なる保守運用に注力するプロバイダーは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の妨げとなる可能性があります。

サービスモデルが硬直的だと、事業成長や新規市場への参入、新技術の導入に対応できず、結果としてコストのかかるベンダー切り替えを余儀なくされます。

そのため、積極的に最適化提案を行い、アプリのモダナイズを支援できる先進的な文化を持つAMSパートナーが理想的です。

これは、現在のためのソリューションであるだけでなく、将来の成長への備えでもあります。

 

これらのリスクを理解することで、AMSプロバイダー選定に十分な時間と注意を払うべき理由が明確になります。次の章では、貴社の成功を真に支援できるプロバイダーを見極めるための評価フレームワークをご紹介します。

AMSプロバイダー選定で押さえるべき7つの質問

マネージドアプリケーションサービス市場には多くの選択肢があります。    その中で最適なパートナーを見つけるには、体系的かつ多角的な評価が欠かせません。

これには、アプリケーションのパフォーマンスとビジネス運営に直接影響を与える複数の要因を注意深く評価することが求められます。

AMS provider 7 features

以下、検討すべきポイントをご紹介します。

1. 技術力と業界特有の経験

選ぶべきプロバイダーは、貴社の特定の技術スタックや業界要件に対する深い理解と実績を持っている必要があります。

レガシーシステム、クラウドネイティブアプリケーション、ハイブリッド環境など、貴社と類似したアプリケーションの管理実績があるプロバイダーを探しましょう。

アプリケーション管理の専門知識は、現在の技術だけでなく、貴社が将来採用を計画している新しいプラットフォームもカバーしている必要があります。

また、業界認証(ITIL、CMMIなど)や主要な技術ベンダー(Amazon、Microsoftなど)とのパートナーシップは、ベストプラクティスを常に取り入れている姿勢を示すプラスポイントです。

同様に重要なのは、候補となるプロバイダーに貴社の業界での経験について尋ねることです。小売業は製造業とは異なり、ヘルスケアや建設業もまた異なります。

業界特有の規制要件に関するノウハウがあれば、大きなアドバンテージとなります。この知識は、導入の成功に直接影響します。

2. 明確な料金モデルとコスト構造

最も重要な基準の一つは、間違いなく透明性のある料金体系です。この明確性により、コストを正確に予測し、予期せぬ出費を避けることができます。

通常、AMSプロバイダーは主に4つの料金モデルを提供します。

  • タイム&マテリアル(T&M)モデル:実際に作業した時間と、シニアリティや専門性に応じてレートが異なる専任のFTEリソースに基づいて請求されます。予測不可能な作業量や頻繁なアプリケーション変更がある組織に最適です。ただ、予算超過を防ぐために明確なガバナンスを確立し、コストの可視化のために詳細な利用状況レポートを要求すべきです。
  • サーバー単位(Per-Server)モデル:管理対象サーバーの台数に基づく課金。監視、パッチ適用、保守活動が含まれます。オンプレミスまたはIaaS環境で、安定したインフラ構成と明確なサーバー数を持つ組織に理想的です。     ただし、仮想マシン、コンテナ、サーバーレスアーキテクチャが料金計算にどのようにカウントされるかを明確にする必要がある。
  • アプリケーション単位(Per-Application)モデル:複雑性、重要度、サービスレベル、成熟度、ユーザー数など、アプリケーション固有の変数によって料金が決定されます。頻繁にアプリケーションポートフォリオが変化するDXを推進中の組織に推奨されます。このモデルでは、アプリケーションの境界を明確に定義し、料金が単なるアプリケーション数ではなく実際の複雑性を反映していることを確認することが重要なポイントです。
  • リクエスト単位モデル:月間のサポート件数とインシデント対応件数に応じて課金。6ヶ月ごとに契約の見直しが行われます。非常に安定しており、一貫して少量のサポートニーズを持つアプリ環境に最適です。これを最大限に活用するには、「リクエスト」と「インシデント」の定義を明確にし、トランスフォーメーションプロジェクト実施中のトラブルを避けるべきです。

信頼できるプロバイダーは、作業範囲、履歴データ(チケット量、解決時間、障害発生状況)、現行のSLA、サービス要件、アプリケーションの複雑性など、貴社の環境を評価した上で、最適なモデルについてコンサルティングを行うでしょう。

履歴データがない組織の場合、AMSプロバイダーは料金を確定する前に、トライアル期間(1〜3ヶ月)を設けて仮定を検証することも一般的です。

これは巨大な氷山の一角に過ぎません。より詳細にAMSの料金モデルの算出方法や自社に最適なアプローチの選び方を理解したい方のために、包括的なガイドを以下にご用意しました。

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VTIのアプリケーションマネージドサービス(AMS)は、 ITIL準拠のフレームワークとAIによる自動化を組み合わせた次世代ソリューションです。 ビジネスに不可欠なアプリケーションの高いパフォーマンスと安定稼働を維持しながら、 継続的な進化と最適化を実現します。

3. 標準化されたサービスレベル契約(SLA)とパフォーマンス指標

優れたエンタープライズアプリケーション管理サービスには、貴社のビジネス目標と業界標準に沿った詳細なパフォーマンス指標が含まれています。

単に指標を報告するだけでなく、比較可能なベンチマーク基準を明確に定義しているかどうかも重要です。

測定方法、除外事項、クレジット体系を明示した詳細なSLA文書を請求することをお勧めします。その上で、業界標準と比較検討しましょう。例えば、稼働率のコミットメント(99.9%〜99.99%)や、平均解決時間(MTTR)が金融サービスで15〜24時間、ヘルスケアで32〜48時間といった基準が挙げられます。

4. 強固なセキュリティコンプライアンスとデータ保護

今日の脅威環境において、データセキュリティは妥協できない要件です。AMSプロバイダーは、貴社の基準を満たす、またはそれを上回る包括的なセキュリティフレームワークを実装する必要があります。暗号化プロトコル、アクセス制御、脆弱性管理、インシデント対応プロセスなどを体系的に整備しているかを確認しましょう。

また、PDPA(シンガポール)、APPI(日本)、HIPAA(米国)といった業界規制への第三者監査・認証による準拠も確認ポイントです。

グローバル企業の場合、国や地域ごとに異なるデータ保護法が存在するため、データ保管場所(データレジデンシー)への対応方針も必ず評価してください。

5. 文化的適合性とコミュニケーションプロトコルの評価

前述のとおり、文化的な相性は長期的なパートナーシップの成功に影響を与えます。効果的なコミュニケーションは、社内チームとAMSプロバイダー間の円滑な協力関係を支えます。

そのため、ベンダーを評価する際には、コミュニケーションスタイル、報告頻度、エスカレーション手順、そして貴社の組織文化に合った対応姿勢を確認しましょう。

さらに、グローバル展開を行う企業では、タイムゾーン対応や現地企業との協業経験も重要なポイントです。24時間体制のサポートが必要な場合は特に注目しましょう。

6. 先進技術への適応力

将来的な事業拡大を見据えるなら、技術適応力の高いベンダーを選ぶことがカギになります。

ベンダーを切り替えるよりも、選定したプロバイダーがビジネス要件の変化に応じてサービスを柔軟に拡張・縮小できる方が、効率性とコスト削減の面で有利になります。

クラウド移行からAI統合まで、先進技術が次々と導入される次世代アプリケーション管理の時代において、この適応力は貴社の将来的な競争力を左右する重要な検討ポイントです。

7. リファレンスチェックと事例検証

最後に、現在および過去のクライアントからの直接的なフィードバックは、プロバイダーのパフォーマンスと信頼性を測る上で最も有効な情報源です。

自社と規模・業種・技術的複雑性が近い企業の事例をリクエストしましょう。それらの事例は、プロバイダーが貴社が直面している課題と類似した問題をどのように解決してきたかの具体例を提供します。

また、障害対応・セキュリティインシデント・大規模移行プロジェクトなど、困難な状況をどのように乗り越えたかにも注目してください。

その問題解決力と危機対応力が、長期的なパートナーシップの質を決定づけます。

アジアのトップ5 AMSプロバイダー

上記の基準を踏まえ、アジア地域で特に評価の高いAMSプロバイダー5社を紹介します。

VTI

VTIは、最新のITILフレームワークの規律とAI駆動の自動化を組み合わせ、ビジネスクリティカルなアプリケーション全体で運用コストを最適化しながら、予測可能で透明性の高いアプリ運用を実現します。

インシデント管理、問題解決、変更管理、リリース管理において、ITIL v4準拠のワークフローを厳格に遵守することで、標準化されたプロセスの提供を保証します。SLAレベルや価格設定モデルもクライアントに完全に公開しており、高い透明性を確保しています。

さらに、先進的なテクノロジープロバイダーとして、VTIはAI搭載の自動化を統合し、予兆検知、予知保全、自動化されたランブック実行を実現しています。これにより、手動介入を削減し、平均解決時間(MTTR)を短縮しながら、ITILフレームワークにおける高水準のガバナンスとコントロールを維持します。

地域密着型のデリバリーモデルにより、ベトナム、日本、韓国、シンガポールにエンジニアリングチームを配置し、アジア太平洋地域の企業にタイムゾーンカバレッジと多言語サポート(英語、韓国語、日本語)を提供しています。また、24時間365日体制(平日24時間対応)、週5日24時間体制(年中無休24時間対応)、週7日16時間体制(毎日16時間対応) 、週5日16時間体制(平日16時間対応)、週5日8時間体制(平日営業時間内対応)、週7日8時間体制(毎日8時間対応)、週5日4時間体制(平日半日対応)など、ビジネスニーズに応じた柔軟なサポート体制オプションを提供しています。

最後に、セキュリティ対策はデリバリーモデル全体(オンサイト、オンショア、ニアショア、オフショア)に組み込まれており、ISO/IEC 27001:2022などの最新認証により認定されています。

こんな企業におすすめ: 日本、韓国、東南アジアの中堅~大企業で、コスト、プロセスの成熟度、イノベーションのバランスの取れたアプローチを求める企業。

柔軟なサービスカバレッジ、ITIL準拠の標準化プロセス、そしてAIによる効率化を求めつつ、 グローバル大手コンサルティング企業のような高額な料金を避けたい組織に理想的です。

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VTIのアプリケーションマネージドサービス(AMS)は、 ITIL準拠のフレームワークとAIによる自動化を組み合わせた次世代ソリューションです。 ビジネスに不可欠なアプリケーションの高いパフォーマンスと安定稼働を維持しながら、 継続的な進化と最適化を実現します。

Samsung SDS:

サムスングループのITサービス部門であるSamsung SDSは、クラウド、AI/アナリティクス(Brightics)、IoT、製造、小売、物流向けの業界特化型ソリューションにおける強力な能力と、深いシステム統合の経験を兼ね備えています。

プラットフォーム主導のアプローチとデバイス/エコシステムとの親和性により、デバイス・エッジ・バックオフィスの統合を得意とし、大規模な業務変革を支援しています。Samsung SDSは、セキュリティ、運用継続性、そしてハードウェアとソフトウェアの緊密な統合が価値を生む産業ユースケースを重視しています。

同社は、韓国を中心としたAPAC地域でのプレゼンスが特に強く、 サムスンのエコシステム統合による価値を最大限に活用できる顧客層に強みを持っています。 一方で、グローバル展開や商用モデルの一貫性は、世界的な大手インテグレーターほどではない場合があります。

こんな企業におすすめ:APAC地域の大企業、特に製造業、小売、物流事業者で、ハードウェアとソフトウェアの緊密な連携が必要な大企業。IoT/エッジソリューションやプラットフォーム主導のDXを求める企業に最適です。

NTT DATA

NTTデータは、深いシステム統合とコンサルティング能力、そしてグローバルなデリバリー規模を武器に、エンタープライズグレードの大規模SI・AMSを一貫して提供しています。

金融サービス、医療、政府機関など、厳格な規制が求められる業界に強みを持ち、日本市場での豊富な知見に加え、変革コンサルティングから運用までを包括的に支援できるエンドツーエンドのグローバル展開力を兼ね備えています。また、グローバルネットワークと安定した運用モデルにより、ミッションクリティカルな大規模環境でも予測可能で一貫したパフォーマンスを実現します。

一方で、安定性をもたらす規模とプロセスの成熟度は、プログラムの複雑化やコスト増加につながる可能性もあります。大規模な変革プロジェクトでは、正式なガバナンス体制と長めのオンボーディング期間が必要となることを想定しておくとよいでしょう。

こんな企業におすすめ:多国籍企業や大規模組織で、SI(システムインテグレーション)とAMSの両面に強みを持つ実績豊富なパートナーを求める企業。 特に、コンプライアンス対応やグローバルデリバリーを重視し、日本拠点を中心に運用を行う組織に最適です。

Classmethod

ClassmethodはAWSを中心としたクラウドネイティブ領域に特化し、モダナイゼーション、DevOps、データ分析、アジャイル型アプリケーション開発を強みとする日本発のテクノロジー企業です。

実践的なエンジニアリングアプローチで知られ、迅速なクラウド移行、CI/CDパイプラインの構築、分析基盤の自動化など、 製品チームのスピードと柔軟性を高めるソリューションを提供しています。特にAWSとの強固なパートナーシップとクラウドファースト戦略に基づく豊富な実績により、日本市場において高い評価を得ています。

一方で、クラウドネイティブおよびAWS中心のプロジェクトに最適化されているため、広範なグローバルデリバリー体制を必要とする大規模レガシーシステムや、マルチベンダーのオンプレミス環境には向いていない場合があります。

こんな企業におすすめ:日本およびAPAC地域で、クラウドファーストの近代化、DevOpsの導入、AWSネイティブなアプリケーションの再構築を推進したい組織で、エンジニアリング重視のアジャイルなパートナーを求めている企業に理想的です。

富士通

富士通は、幅広いシステム統合とマネージドサービスの実績を、インフラ、クラウド、エンタープライズアプリケーション管理における強固な存在感と組み合わせて提供しています。

同社のサービスは、安全で回復力の高い運用、ハイブリッドクラウドプラットフォーム、そしてクライアントとの共創を通じた大規模かつ異種混在IT環境の近代化と運用管理を重視しています。

富士通のグローバルデリバリー体制と業界経験(公共、通信、製造など)は、インフラとアプリケーション管理を統合したプログラムにおいて、確かな選択肢となります。

大手の老舗ベンダーとして、富士通のサービスモデルは比較的プレミアムかつフォーマルな傾向があります。これは規模感やガバナンス面では有利ですが、非常にリーンで機敏な体制を求める組織には、やや重厚すぎると感じられる可能性があります。

こんな企業におすすめ:強固なセキュリティ、コンプライアンス対応、グローバルデリバリー能力を備えた統合型インフラ+AMSを必要とする大企業や公共機関、特に日本およびAPAC地域で事業を展開している組織に適しています。

AMSプロバイダーとの協働を成功させるには? – 6つのベストプラクティス

最適なAMSプロバイダーを選定することは、成功の「半分」にすぎません。

残りの半分は、契約締結後の効果的なコラボレーション、明確なガバナンス、そして積極的な関係管理によって実現されます。

導入初日から堅牢な運用フレームワークを構築した企業は、AMSへの投資効果を最大化し、ベンダー関係の落とし穴を避けることができます。以下に、実践的なベストプラクティスを6つご紹介します。

AMS provider collaboration 6 best practices

1. オンボーディングと移行管理

体系的なオンボーディング:契約の最終確定、役割定義、初期KPI/SLA目標、システムアクセス権限の付与をカバーする包括的なオンボーディング計画を策定しましょう。

明確なドキュメント化により、ベンダーは貴社の環境を理解するために数ヶ月を費やすことなく、即座に価値を提供できるようになります。

ナレッジトランスファーの計画:移行開始前に、ビジネス要件、システムアーキテクチャ、設定情報、ビジネスロジックなどの重要な情報を文書化します。

社内エキスパートを割り当て、マニュアル、標準プロセス、チェックリストを使用した体系的なナレッジトランスファーセッションを実施し、暗黙知を形式知化します。

段階的な引き継ぎアプローチ:既存チームと新規チームが重複する期間を設けながら、数ヶ月かけて段階的に移行を進めます。

リスクの低いタスクから開始し、ミッションクリティカルな責任を移管する前にテスト期間を設けます。この段階的なアプローチにより、サービスの空白期間を防ぎ、運用に影響を与える前に問題に対処する時間を確保できます。

2. コミュニケーション体制の確立

定期的なタッチポイントの設定:運用上の課題に対応する日次スタンドアップ、進捗確認のための週次ステータスコール、戦略的整合性を図る月次レビューなど、コミュニケーションの頻度を定義します。

併せて、問題が迅速に適切なステークホルダーに届くよう、優先的なコミュニケーションチャネルとエスカレーション経路を事前に決めておくことをお勧めします。

透明性を確保するドキュメント管理:会議記録、決定事項、アクションアイテムを共有リポジトリに保存し、 ダッシュボードを活用して進捗を追跡し、双方が進行中の作業を可視化できるようにします。

明確な記録は誤解を防ぎ、必要に応じて監査やトラブル対応時の証拠にもなります。

3. パフォーマンスモニタリング

測定可能なSLAとKPIの設定:ビジネス目標を、システム稼働時間、応答時間、チケット解決速度、その他の重要な指標をカバーする具体的で測定可能な目標に落とし込みます。

これらを契約書に明確に文書化し、開始時点から責任の所在を明確にします。

定期的なパフォーマンスレビューの実施:週次ダッシュボードと月次ビジネスレビューを通じて、ベンダーの成果を継続的に監視し、傾向分析を行います。

継続的にトレンドを追跡し、小さな問題が大きな問題になる前に改善機会を特定します。

四半期ごとに経営層レベルのレビューを実施し、戦略面での整合性を確認し、必要な調整を行うことも効果的です。

課題管理の仕組み化:SLA未達成や品質問題を詳細に記録し、 体系的なレビュープロセスを通じて迅速に対処することで、説明責任を明確にし、継続的な改善につなげます。

4. 関係性ガバナンスの確立

正式なガバナンス体制の構築:契約監督、変更承認、意思決定を担当する専任のベンダーマネージャーまたはステアリングコミッティを設置します。

明確な責任体制が混乱を防ぎ、組織全体で一貫したベンダー管理を実現します

ドキュメントの一元管理:契約書、変更依頼、パフォーマンスレポート、連絡先情報など、AMS関連のすべての資料を一元的に保管します。

整理された記録により、担当者交代時にも継続性が確保され、監査が簡素化されます。

経営層による定期的なレビュー:日常的な運用会議に加え、四半期ごとにリーダーシップレビューを実施し、 戦略面での整合性、パートナーシップ全体の健全性、必要な方針転換を評価します。

経営層の関与はコミットメントの表明であり、スコープ逸脱の防止にもつながります。

5. ナレッジ保持戦略

継続的なドキュメント化の義務化:システムに関する知識を戦略的資産と位置づけ、

アーキテクチャ、運用手順、カスタマイズ情報などの最新ドキュメントを常にリポジトリに保管するようベンダーに求めます。

これにより、ベンダー担当者の異動や離任による知識喪失を防げます。

共同トレーニングの促進:社内チームとベンダースタッフが協働する並行作業セッション、Q&Aフォーラム、課題解決ワークショップなどを実施し、 実践を通じて知識やノウハウを共有します。

これにより、ドキュメントだけでは伝えきれない暗黙知が移転されます。

ナレッジ監査の実施:スタッフのローテーションや知識確認テストを通じて、重要な知識が社内に確実に保持されているかを定期的に検証します。

不足があれば対象を絞ったクロストレーニングやドキュメント更新を通じて直ちに対応します。

6. プロバイダー移行を管理する4つのステップ

AMSベンダーを切り替える際は、移行期間中の業務継続性を最優先に考慮します。

  • 重複期間の設定:移行期間中に旧ベンダーと新ベンダーが一定期間並行して業務を行うフェーズを設け、新チームが旧チームの指導のもとで本番環境の運用に慣れながら、最終的な責任移管に備えます。
  • 包括的な引き継ぎの実施:ソースコード、設定、ドキュメント、アクセス権限など、関連資産をすべて移管し、 移行完了後にはセキュリティプロトコルを即時更新します。
  • サービスレベルの整合性確保:既存SLAを明確に文書化し、新プロバイダーが同等またはそれ以上の水準を提供できるようにします。初日から具体的な目標値とレビューサイクルを設定します。
  • リスク軽減策の策定:データ損失、ダウンタイム、コンプライアンス違反などの潜在的な問題を特定し、責任者を明示。 緩和計画を策定し、移行期間中はリスク管理簿を常に更新します。このようなリスクに備え、コンティンジェンシープランとして、新しい契約には明確な解約条項を盛り込むことが重要です。

まとめ

適切なAMSプロバイダーを選定することは、アプリケーション管理のあり方を変革し、 社内リソースをイノベーションや成長戦略に集中させる大きな機会となります。

成功の鍵は、自社固有のニーズを理解し、明確な基準でプロバイダーを評価し、技術要件とビジネス目標の両方に合致するパートナーを選ぶことです。

最も高額なオプションが常に最適とは限りません。自社の独自の状況に応じて、専門知識、サービス品質、コスト効率の適切なバランスが取れたプロバイダーを見極めることに注力してください。

時間をかけて潜在的なパートナーを徹底的に評価し、リファレンスを確認し、文化的な相性も確かめた上で意思決定を行いましょう。

信頼できるAMSプロバイダーを選定することで、アプリケーションが確かな専門知識を持つプロフェッショナルの手に委ねられているという安心感を得られます。その結果、社内チームはビジネス価値の創出に集中することができます。

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