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CDPとは ?最適なプラットフォームの選択方法

7月 10, 2025

かつて小売業界では、サイロ化されたデータがパーソナライズされた顧客体験の提供や事業成長の大きな障壁となっていました。しかし、技術の進歩により、この状況は劇的に変化しました。その中でも、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)は小売業界に変革をもたらす画期的なソリューションとして注目を集めています。顧客を理解することは単なる優位性ではなく、必須条件となる中、CDPは事業成長と顧客エンゲージメントの向上に貢献する重要なソリューションとなっています。本記事では、 CDPとは 何か、そして分散した顧客データの一元管理によりどのような業務効率化を実現できるのかを、わかりやすく解説します。また、CDPの主な機能とともに、データドリブンな時代における活用法・導入戦略について説明します。

CDPとは?

CDPとは、カスタマーデータプラットフォームであり、マーケティングツールとして、事業者のカスタマーインテリジェンス(CI)戦略を根本的に変革するものです。

具体にCDPとはどういうシステムですか?

CDPは、Webサイト、モバイルアプリ、CRMシステム、POSシステム、ECサイト、実店舗など、あらゆる顧客接点からデータを収集し、全体的な顧客プロフィールとして一元管理する高機能なデータ統合基盤です。しかし、データを格納するデータベースだけではなく、消費者行動を時系列で分析し、複数の顧客IDを統合することで、顧客の全体像となる「360度顧客ビュー」を提供します。

CDP市場は2024年〜2030年の間に年平均成長率24.4〜39.9%という急成長を見せると予測されています。これは、日本・韓国・東南アジアの小売業界にとって、自然の流れと言えるでしょう。なぜなら、顧客データが複数のシステムに散在することで生じていた、パーソナライズの妨げと顧客対応の遅れの課題を解消できるからです。さらに、インターネット普及率の向上やEC市場の急拡大により、消費者がすべての接点でシームレスかつパーソナライズされた体験を求めるようになり、消費者行動は「デジタルファースト」へ移行しています。

つまり、事業者が収益拡大および業務効率化におけるカスタマーインテリジェンスの重要性を認識するようになりました。

CDPCRMDMPの比較

データのサイロ化による管理課題が深刻化する中、アジアの経営者はCDP、CRM、DMPの違いを正しく理解する必要があります。これは複雑な課題であるものの、戦略的優位を築く上で極めて重要です。これらのプラットフォームは、それぞれ異なる背景とニーズに応じて誕生しました。

cdp-vs-crm-vs-dmp

CDPとCRMの違いは何ですか?

CRM(顧客関係管理)は、顧客を特定できるファーストパーティデータを利用して、販売プロセスや顧客対応履歴を一元管理するのに優れたツールで、顧客の個人情報、購入履歴、営業担当者との会話履歴をすべて記録しています。

こうしたプラットフォームは、営業担当やカスタマーサポート部門に非常に有効ですが、クリックやマウスオーバーなどの匿名行動データ収集や、様々なチャネルからのデータ統合に制限があります。近年、消費者がWeChatやGrabなどのスーパーアプリ、ソーシャルコマース、実店舗でのシームレスな体験を重視するようになり、従来システムの限界が顕著になっています。

DMPとCDPの違いは何ですか?

DMP(データマネジメントプラットフォーム)とCDPの基本的な違いは、顧客データとパーソナライズ性へのアプローチにあります。DMPは匿名化されたデータを活用して広告・マーケティング施策の最適化を行うのに対し、CDPは統合的な顧客プロファイルを作成し、顧客体験の包括的な管理を目指します。

DMPは大量のサードパーティデータを集約・分析することで、ターゲティング広告の精度向上とコスト削減を実現し、広告運用の効率化を図ります。これにより、匿名のウェブサイト訪問者が「高級車の購入者」や「頻繁に旅行する人」といったグループに分類されます。

そのため、マーケティングやキャンペーンなどに非常に効果的ですが、顧客一人ひとりの購買行動を全体的に把握できず、長期的な顧客プロファイルの構築やパーソナライズには対応していません。例えば、東京に住んでいるある女性が高級ファッションのウェブサイトを頻繁に訪れていることは分かるものの、その行動を他のタッチポイントと結びつけ、各チャネルでパーソナライズされた体験を提供することはできません。

一方、CDPはすべての顧客とのやり取りを1つのプロファイルにまとめます。ファーストパーティデータ(顧客が直接伝える情報)と行動データ(顧客がウェブサイトやアプリで行ったこと)を統合することで、360度顧客ビューを作成し、すべてのタッチポイントでリアルタイムでパーソナライズされた体験を提供します。

比較表

CRMDMPCDP
活用場面営業チーム、取引状況、操作履歴の管理、既存顧客の育成広告費の削減、広告リーチの最適化、類似顧客の検索すべての顧客接点(オンライン・オフライン)でのパーソナライズされた体験の提供
データ種類ファーストパーティの特定データサードパーティの匿名データファーストパーティとサードパーティの特定・匿名データ
主な機能販売プロセス管理、カスタマーサービスターゲティング広告、メディア購入のコスト効率化リアルタイムでパーソナライズされた顧客体験の提供
制限匿名の訪問者を追跡したり、クロスチャネルの行動を統合したりするこごができない。広告用途に限定され、個々の顧客情報の分析に向かない。導入設定が複雑で、コストが高く、データガバナンスの専門知識が求められる。

このことから、単独の解決策は存在しないことが分かります。CDPはCRMシステムのデータに対して、消費者ごとの購買行動に関する情報を収集し販売記録を補完することで、よりパーソナライズされた体験を提供します。また、ターゲティング広告のための有益なファーストパーティデータを提供するとともに、同意に基づくパーソナライゼーションやロイヤルティ施策を実現し、DMPの機能を強化します。そして、逆もまた然りです。

CDPが事業成長と業務効率化を促進する方法

カスタマーインテリジェンスの強化を通じて収益成長率を向上

CDPは、オンラインとオフラインの両方で統一された顧客プロファイルを必要とする現代企業への対応策です。前述の通り、CDPは顧客、パートナー企業など、複数のデータソースからデータを集約し、特定・匿名を問わず、顧客一人ひとりの行動を一元管理し、実用的なビューを作成します。こうした全体的な視点により、全ての接点でパーソナライズされたマーケティング施策が可能になり、顧客ロイヤルティの向上とリピート購入の促進につながります。

実際の導入事例から、このようなアプローチは非常に顕著な利点があることが明らかになりました。顧客属性に応じて体験を個別化することで、顧客維持率を最大30%向上させ、顧客生涯価値(CLV)を最大25%増加させることができます。例えば、ある靴メーカーは、CDPの導入により、広告費対効果(ROAS)が5倍に増加しました。また、キャンペーンを通じて50万ドルの投資で140万ドルの収益を達成しました。

さらに、CDPは、ターゲティング広告で最も有望な顧客層に投資し、無駄な支出を削減しながら、マーケティング費用を最適化します。多くのマーケティング担当者は、6ヶ月以内に投資回収を達成し、5人中4人は12ヶ月以内にポジティブなROIを実現したと報告しています。

マーケティングの精度とカスタマーサービス品質を向上

CDPで最も注目されているのは、顧客の属性、行動、購買履歴などの情報が含まれる顧客プロフィールを活用した、ハイパーターゲティングのマーケティング戦略です。事業者はこうした情報をもとに、各顧客に応じてメールキャンペーン、デジタル広告、動的なウェブサイト体験を提供し、キャンペーンの効果とROIを大幅に向上させることができます。

また、CDPのカスタマービュー機能は、カスタマーサービス業務にシームレスに統合でき、より迅速で正確な情報提供と対応を実現できます。日本や韓国など、サービス品質が顧客ロイヤルティに直結する市場では、このような強化されたカスタマーサービスが重要な差別化要因となります。カスタマーサポートチームは、顧客の購入履歴、嗜好、過去のインタラクションを瞬時に確認できるため、問題をより効果的に解決し、個々の顧客に最適な提案を提供できます。

データ分析に基づくインサイトによりDX加速と業務効率化を実現

マーケティング戦略の最適化にとどまらず、データインフラを刷新することで、CDPはリアルタイムでの意思決定を実現し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させます。

小売業界では、代表的な導入事例として、顧客インサイトと需要予測に基づく在庫管理システムと購買決定支援機能が挙げられます。適切なCDPは、データをすべて収集・整理し、商品管理、発注管理、サプライチェーン管理など、必要なモジュールを連携することで、在庫計画の立案・最適化を実現できます。購買パターンと顧客行動の分析により、小売業者は消費者の需要動向を予測し、それに応じて在庫量を調整することができます。したがって、過剰在庫と在庫切れの問題を軽減し、業務効率が向上します。

アジア太平洋地域の小売市場は急速に変化し、需要の変動が大きく、オムニチャネル化の傾向が強まっています。こうした背景において、このような予測能力の重要性がさらに際立っています。

さらに、CDPが包括的なデータ分析を通じて、離脱リスクの高い顧客セグメントを早期に特定するため、事業者は適切な顧客維持戦略を展開できます。日本の化粧品企業である資生堂は、企業向けのCDP「Treasure Data」を使用した結果、顧客維持率が向上し、1年後に収益が11%増加しました。こうした機能により、事業者は多様な文化を持ち、顧客維持が持続可能な成長に重要なアジア太平洋地域において、顧客ニーズに応じた最適なオファーやエンゲージメント戦略を実行できるようになります。

経営者向けのCDP導入の簡単ガイド

適切なCDPベンダーの選択

CDPの選択は、最適な工具箱を選ぶのと同じです。各ツールが連携して機能し、企業固有の要件を満たすことが重要です。

特にアジア太平洋地域の各国にはデジタルシステムや規制が様々なため、慎重に検討する必要があります。

CDP選定時に注目すべきポイント

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システム連携のしやすさ:既存システムとの接続性はどれくらいスムーズですか? CDPは、POS、CRM、オンラインストア、マーケティングツール、分析ソフトウェアなど、現在お使いのシステムと円滑に連携できる必要があります。アジア太平洋地域では、企業が多種多様なテクノロジーを活用しているため、こうした「システム同士の相性の良さ(連携のしやすさ)」が極めて重要です。

拡張性:成長する子どもに少し大きめの服を買うように、将来を見据えて成長に対応できるCDPを選びましょう。ビジネスの拡大に伴い、顧客数やデータ量が増加しても柔軟に対応できるプラットフォームが求められます。特に急成長を続けるアジア市場においては、この点が非常に重要になります。

データセキュリティと法令遵守:まるで家にしっかりとしたセキュリティシステムを備えるように、CDPにも強固なセキュリティ対策が必要です。アジア各国ではプライバシーに関する法律が異なり、日本ではAPPI(個人情報保護法)、シンガポールではPDPAなど、国ごとに独自のルールがあります。CDPは、こうした各国の規制を確実に遵守し、顧客データを安全に保護できるものでなければなりません。

アジアで知っておくべきCDPベンダー トップ5

Treasure Data(トレジャーデータ):

まるで数百万冊の本の中から、目的の一冊を瞬時に見つけ出せる天才司書のような存在です。Treasure DataはAIを活用して、顧客に関するあらゆる情報を一つの統合された全体像にまとめ上げます。日本、シンガポール、オーストラリアで特に高い実績を持ち、小売業、金融業、製造業など幅広い業種で力を発揮します。

VTI

必要なものを的確に作り上げてくれる、地域密着型の職人のようなCDPベンダーです。ベトナム、日本、韓国、シンガポールに拠点を持ち、1,500人以上のエンジニアチームがお客様のビジネスを支えます。VTIは、現地の言語やビジネス文化を理解した「身近な専門家」であり、車を修理するだけでなく、メンテナンス方法まで丁寧に教えてくれる信頼できる整備士のような存在です。

工場、小売店、銀行、運輸業などの伝統的な企業を、スマートでデータ主導型の企業へと変革させることを得意としています。異常パターンの検出、予兆保全、需要予測などの高度な機能も備えており、ビジネス課題を根本から解決します。

そして何よりの強みは、すべてをゼロからお客様のニーズに合わせて構築することです。必要なものを、必要なだけ――過不足なく提供します。

Antsomi CDP 365

Antsomiは、東南アジアの顧客行動を熟知した「地域密着型のマーケティングのプロフェッショナル」と言える存在です。シンガポール発のこのCDPは、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった国々における独自の購買習慣を深く理解しています。顧客自身がまだ気づいていないニーズを先読みして提案してくれる、頼れるマーケティングアシスタントのような機能を備えており、小売業や金融業に最適です。

Tealium AudienceStream

Tealiumは、顧客が関心を示した瞬間にパーソナライズされたメッセージを届けられる、まるで電光石火のメッセンジャーのようなCDPです。リアルタイムで顧客データを処理できるため、顧客の行動に即座に対応することが可能です。 また、ITの専門知識がなくても使いやすいユーザーフレンドリーな設計が特徴で、小売業、金融業、メディア業界など幅広い分野で活用されています。

Twilio Segment

Segmentは、あらゆるカスタマイズに対応できる「熟練エンジニア向けのツールキット」と言っても過言ではありません。SegmentのCDPは450以上の外部ツールと連携可能で、まるでどんなデバイスにも適合する万能アダプターのように柔軟に機能します。特に、自社で自由に開発・拡張したいテクノロジー企業やEC事業者にとって理想的な、開発者フレンドリーなソリューションです。

よくある課題とその解決策

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データ品質

多くの企業が直面するのは、「ゴミを入れればゴミが出る(garbage in, garbage out)」という問題です。 不完全で整理されていないデータをCDPに投入すれば、出てくる結果もまた不正確なものになります。これは、腐った食材で料理を作るようなもので、美味しい料理にはなりません。

この問題に対処するには、最初から強固なデータ収集プロセスを整備することが重要です。また、料理人が調理中に味を確かめるように、データの品質も定期的にチェックすることが大切です。

部門間の連携不足

営業、マーケティング、IT、コンプライアンスなどの部門がうまく連携できていないと、CDP導入は、まるで言語がバラバラな家族の同窓会をまとめるようなものになってしまいます。

この課題を解決するには、各部門から代表者を集めたプロジェクトチームを編成することが効果的です。定期的にミーティングを開き、シンプルな言葉で、各部門のニーズや懸念を共有しましょう。

データドリブン文化の構築

アジア太平洋地域の多くの企業では、まだ真の意味で「データドリブンな組織文化」が根づいていません。必要なツールは揃っているものの、現場で効果的に使われていないことが多いのです。

そこで、まずは小さな成功体験(クイックウィン)から始めることがカギです。顧客データがどのように日々の業務に役立つのかを実例で示しましょう。たとえば、顧客の購入履歴を知ることで、営業チームがより的確な提案ができる、というような具体例です。

一歩ずつ着実に進めましょう

すべてを一度にやろうとしないでください。運転を学ぶのと同じで、いきなり高速道路に出るのではなく、空いている駐車場から始めるのが基本です。

まずは、オンラインストアやロイヤルティプログラムなど、重要な領域から取り組みましょう。

次に、それがうまく機能するようになったら、他の部門にも展開します。

最終的には、すべての顧客接点をつなぎ、一貫した体験を提供できる状態をゴールとします。

このような段階的なアプローチには通常6〜12か月かかりますが、急いで失敗するよりも、確実に進めたほうが成果につながります。

成果を測定しましょう

最後に重要なのは、明確な目標を設定し、その達成状況を継続的に確認することです。以下のような問いを自問しながら、ゴールを明確にしましょう。

  • 以前よりも質の高い顧客データが得られているか?
  • 顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供できているか?
  • マーケティング施策の効果は高まっているか?

まとめ

データと顧客ニーズの進化が鍵を握る時代において、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、もはや欠かせない存在となっています。断片的なデータを統合し、行動可能な顧客プロファイルを構築することにより、パーソナライズされた体験の提供やROIの最大化を可能にします。間違いなく、CDPは企業と顧客との関わり方そのものを再定義しつつあります。CDPの導入は単なるテクノロジーのアップグレードではなく、 顧客理解の深化、業務効率の向上、そして持続的な競争優位性を実現するための戦略的な投資です。大企業の経営者、小売業のマネージャー、CXOの皆様にとって、CDPを活用して顧客との強固な関係を築き、新たな成長の機会を切り拓くべき時は「今」なのです。

顧客とのつながりを強化し、継続的な成長を実現する絶好のタイミングです。強力なCDPを活用することで、顧客エンゲージメントを革新し、目に見える成長を実現する方法を探ってみましょう。貴社に最適なご提案をいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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