CFOからの「ITコストを抑えよ」という圧力が高まる一方で、現場はアプリのダウンタイム増加を報告。 取締役会では「競合他社はよりスリムな技術体制で、なぜあれほど俊敏なのか」と疑問の声。同時に、多くの組織が、自社チームに不足している専門スキルの確保にも苦戦しています。アプリケーション管理の外部委託を検討すべきタイミングかもしれません。いまこそ、マネージドアプリケーションサービス市場規模への関心はかつてないほど高まっています。
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本稿をわずか数お読みいただくだけで、戦略策定、取締役会への説得材料、あるいはベンダーの一次評価に必要な知見を即座にまとめて手に入れることができます。本稿では、最も重要な情報のみを厳選して集約しています。市場の拡大状況、アジア地域の価格ベンチマーク、MSP(マネージドサービスプロバイダー)に求められる最新トレンド、実践的なリスク対策フレームワーク、そして2025〜2030年の成長予測を、意思決定に直結する形で整理しました。
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マネージドアプリケーションサービス市場規模は?

世界の市場評価と競合状況
マネージド・アプリケーション・サービス(AMS)市場は、エンタープライズITサービス分野で最も急速に拡大しているセグメントの一つであり、アプリのホスティング、保守、監視、サポートを継続的に外部委託する形態を指します。
Globe Newswireによると、業界アナリストの推定では、世界のアプリケーション管理サービス市場は2024年に543億ドルに達し、2030年には1,497億ドルへ拡大、年平均成長率(CAGR)18.4%が見込まれています。
グローバル規模では、IBMが約15%の市場シェアを占め、Wipro、Accenture、Capgeminiといった競合他社がそれに続きます。
また、アジアの地域ベンダーに目を向けると、Samsung、富士通、VTI、クラスメソッドなど、信頼できるマネージドパートナーが存在感を高めています。
これらトップクラスのベンダーの顧客維持率は85%を超えています。エンタープライズ顧客がいかに高い満足度を感じているかを示すと同時に、アプリケーション管理タスクをアウトソーシングすることの「正しさ」を示す、一つの証と言えるでしょう。
導入トレンドを見ると、複数業界で採用が加速。とくに下記の割合が目立ちます。
- 銀行・金融・保険(BFSI):市場収益の 28%
- ヘルスケア:18%
- IT/通信:22%
地域別の市場分布と成熟度
アプリケーション・パフォーマンス管理(APM)を含む関連市場の規模を分析すると、地理的には北米(市場シェア42%)と欧州(35%)に集中していることが明らかです。しかし、最も高成長な地域として浮上しているのがアジア太平洋であり、2030年まで年平均CAGR22%の成長が見込まれています。
もちろん、市場の成熟度は地域により大きく異なります。成熟市場では高品質なプレミアムサービスが求められる一方、新興市場ではコスト効率の高いソリューションが優先される傾向にあります。
たとえば、日本はエンタープライズでの導入率が65%、オーストラリアは大企業で58%です。
それに対して、韓国(35%)やシンガポール(42%)は、政府のデジタル化や製造業の自動化施策により新たな成長機会が生まれている市場と見られています。
アジアにおけるAMS価格ベンチマーク
一般的なマネージドサービスの分析では、月額1ユーザーあたり50〜250米ドルが目安とされています。このレンジはアプリケーション・マネージド・サービス(AMS)にも概ね当てはまります。
とはいえ正確な金額を断言するのは依然として困難です。実際のコストは、ベンダーの規模、プロジェクトの範囲(スコープ)、サービスレベル、そして業界特有の要件によって大きく変動するためです。
>>> 関連記事:ITマネージドサービスの料金体系:コストの計算方法
アジア太平洋諸国をもう少し掘り下げると、国ごとの人件費の違い、業界専門性、規制環境、サービス提供デリバリーモデルといった要因によって、価格ベンチマークは異なります。以下に示すのは、公開されている業界データからまとめた、国別の参考ベンチマークです。
- 日本:1時間あたり100〜149ドルが一般的。専門性の高いサービスではそれ以上になるケースもある。厳格なコンプライアンスと高品質要件が価格に反映。
- オーストラリア:1時間あたり80〜150ドル。成熟したITアウトソーシング基盤と高度なインフラが背景。
- シンガポール:1時間あたり50〜100ドル。サービスの複雑性や業界特化度により変動。
- 韓国:特定のデータは限定的だが、概ね1時間あたり50〜85ドルで、シンガポールと同等かやや低い水準と見られる。
なお、料金モデル自体もベンダーにより異なります。時間単価で請求するベンダーもいれば、ユーザー単位、デバイス単位、あるいは階層別の月額バンドル(パッケージ)を採用するベンダーもいます。これらの違いが、たとえ同じ地域や同じ業界内であっても、最終的な価格に大きなばらつきを生む要因となります。
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無料テンプレートダウンロードアプリケーションマネージドサービス市場を形成する新たなトレンドとは?
全体として、AMS市場では、従来の問題発生後に対応する事後対応型モデルから、ビジネス継続性とパフォーマンス最適化を重視した、予防的で成果重視のサービス提供モデルへの大きな転換が進んでいます。
以下で、企業がAMSを最大限に活用できるように注目すべき4つのトレンドをご紹介します。
- AIを活用したハイパーオートメーション型のアプリケーション管理
- セキュリティ強化の推進
- クラウドとハイブリッドモデルの普及
- 業界特化型AMSへの需要拡大

AIを活用した自動化がサービス提供体制を変革
AIの導入は、AMS市場を変革する最も重要なトレンドで、ベンダーが企業に価値を提供する方法を根本から変えています。
これまで人手によって行われていた監視業務は、スマートな監視ツールが担当するようになっています。機械学習の活用により、障害が発生する前に予測できるようになり、ダウンタイムを40%まで削減しながら、複雑なIT環境でリソース配分を最適化することができます。
また、AIOpsの導入により、インシデント対応、パフォーマンスチューニング、キャパシティ計画などが自動化され、2030年までにAMSコストを約25〜30%削減できると予測されています。
さらに、自然言語処理(NLP)の活用により、一般的なアプリケーション障害への自動対応が可能となり、技術者は反復作業から解放され、より戦略的な業務に集中できます。
ただし、AIにはハルシネーション(知識の幻覚)といった課題も残されています。そのため、AIによる完全自動化よりも、人間が介在する「Human-in-the-loop」型のマネージドサービスが、より信頼性の高い運用モデルとして注目されています。
ポイント:予測分析機能は、追加オプションではなく標準機能として求められる時代になっています。ベンダーを選定する際は、この点を必ずチェックしましょう。
セキュリティ重視のアーキテクチャが市場標準
サイバーセキュリティの統合は、企業がAMSを評価する基準を根本的に変革しました。
これまでオプションとして提供されていた脅威防御機能は、現在では初期段階からサービスフレームワークに組み込まれることが求められています。ゼロトラストアーキテクチャの原則が広がり、アプリケーション管理においても、すべてのアクセスとデータフローに対する継続的な認証・監視が標準となっています。
つまり、企業の優先順位が変化しました。いまやコスト最適化よりも安全性が最優先事項となり、セキュリティ関連のコストはアプリケーションパフォーマンス管理の標準的な予算項目として扱われるようになっています。
アジア太平洋地域では、日本やオーストラリアなどでデータ保護への関心が非常に高まり、APPIやPDPAなどの厳格なデータローカライゼーション要件に準拠したローカルホスティングソリューションの需要が増加しています。そのため、クラウドファーストおよびハイブリッド戦略を採用する企業が増え、現在では導入プロジェクトの69%がオンプレミスではなくホステッドソリューションを選択しています。
ポイント:法規制が頻繁に変わる環境では、コア技術に加え、セキュリティ分野に特化した知見を持つベンダーを選ぶことが重要です。
クラウドおよびハイブリッドモデルの主流化
94%の企業がクラウドサービスを利用しているため、クラウドベースのアプリケーション管理への移行はすでに主流となっています。
また、80%の企業がハイブリッドモデルの採用がアプリケーションおよびデータ管理に有益であると回答しました。Gartnerの予測によると、2027年までにハイブリッドクラウドを利用する企業が90%に達する見込みです。
この動きは自然な流れといえます。ミッションクリティカルなワークロードは、自社のプライベートクラウドで管理することでセキュリティを確保できます。
また、ハイブリッドモデルは、需要変動にも柔軟に対応し、ITインフラを必要に応じて拡大・縮小することが可能です。
さらに、CAPEX(設備投資)からOPEX(運用費用)への移行によるコスト削減効果も主な理由の一つです。
この傾向は、企業が多様なインフラ要件の中で柔軟性、セキュリティ、コスト効率のバランスを取る必要性を示しています。
ポイント:AMSの導入を検討する際、クラウドに関する専門知識は欠かせない要素であるため、クラウド移行、サイバーセキュリティ、コンプライアンス対応の経験を持つベンダーを選ぶ必要があります。また、ハイブリッド環境やマルチベンダーシステムに対応できる実績を持つパートナーであれば、、ベンダーロックインを回避できる統合性が高いサポートを提供します。
業界特化の専門性が市場を細分化
近年、各業界が直面する規制要件や運用上の課題が複雑化しつつあり、業界特化の専門知識がますます重要になっています。
つまり、業界によってマネージドサービスパートナーに対して求められる専門能力が異なります。例:
- 銀行・金融・保険(BFSI)業界は、最も厳格な要件に直面しています。銀行や保険業務では、データセキュリティとリアルタイムの情報更新が極めて重要で、高いネットワーク稼働率、迅速な障害検知、そして素早い問題解決が求められます。また、ベンダーは複雑な規制環境を理解しながら、デジタル化とモバイル化が進む消費者に対して、スムーズな業務プロセスを提供する必要があります。
- 医療業界では、業界特有のコンプライアンスへの対応力が重要です。医療データを扱う情報システムは、不正アクセス防止のための厳格なセキュリティ対策を講じる必要があります。
- 製造業ではIoT統合というトレンドが進んでいます。トヨタ自動車は生産ラインの監視・分析にIoTを導入することで、生産性が30%向上しました。また、Honeywellは化学物質製造工程にIoTソリューションを活用することで、エネルギー消費を15%削減できました。このような環境では、アプリケーション管理においてもリアルタイム設備監視、予知保全システム、産業自動化プラットフォームとの連携が求められます。
ポイント:こうした業界特有の要件が、市場を細分化する新たな要因となっています。そのため、汎用的な技術力だけでは不十分であり、各業界のコンプライアンス対応に実績を持つベンダーを選定することが、企業の競争力強化につながります。
リスク要因とベンダー管理のベストプラクティス
AMSベンダーを選定する際、リーダーとして検討すべきリスクが4つあります。以下では、各リスクの内容、実践的な対策、そしてベンダー評価チェックリストに反映すべきポイントをまとめています。

1. 規制遵守とデータ主権
アジア太平洋地域では、各国の法規制が絶えず変化しています。BFSIや医療業界などでは、法令違反や不明確なデータ保管場所の管理が、罰金、監査不合格、顧客信頼の喪失につながる可能性があります。
そのため、各業界のプライバシー法、業界ガイドライン、ISO認証などに対応した経験と認証を持つベンダーを選定する必要があります。
データローカライゼーション、監査および情報漏洩通知権、第三者による定期的な認証などのコンプライアンスに関する内容を契約上の明確な義務として定めることが重要です。
また、協業において問題が発見された際に実行可能な是正措置の期限を明示させることを強く求めるべきです。
2. ベンダーロックインと独自依存リスク
独自プラットフォームの採用、文書化されないカスタマイズ、不明確な知的財産権の取り扱い条項は、長期プロジェクトにおける隠れコスト増加の要因となります。その結果、柔軟性が低下し、ベンダー変更が困難でコストが高いです。
そのため、可能な限りオープンスタンダード、API、および出力可能なデータ形式を採用すべきです。カスタマイズの文書化、設定内容の出力、独自開発コードに関する所有権・ライセンス条件を明確にしておく必要があります。
契約上で、ベンダー負担による知識移転、引継研修期間、移行関連資料(システム運用手順書、スクリプト、テスト計画)の引き渡しなど、プロジェクト終了・移行に関する条件を明確に交渉することが重要です。
重要なのは「何を引き継ぐか」ではなく、「どのように引き継ぐか」です。移行可能性と業務の文書化により、隠れコストを防ぐことができます。
3. サービスレベル未達成
期待値とSLAが不明確な状態や未成熟なインシデント対応プロセスは、顧客の信頼を損ない、予期せぬ重大なビジネス損失につながります。
そのため、稼働率、平均復旧時間(MTTR)、変更成功率、リクエストへの応答時間などの測定可能なKPIを初期段階から明確に定義し、未達成の場合の是正措置や改善計画を事前に検討する必要があります。
また、月次の運用レビューや四半期ごとの経営会議を含むガバナンス体制を設計し、重大度ごとに明確なエスカレーションフローと時間制限付きSLAを定義することも重要です。
さらに、共同ガバナンス委員会により、ロードマップを調整し、問題が深刻化する前に繰り返し発生する課題を早期に把握できます。
ポイント:SLAを効果的に機能させるには、ガバナンス体制とエスカレーションプロセスが不可欠です。
4. セキュリティリスクと統合上の課題
ベンダー側のセキュリティが弱い場合、企業がリスクにさらされます。脆弱なセキュリティ対策や統合体制の不備は、サイバー攻撃を招き、コンプライアンス違反を引き起こします。
そのため、ベンダーとの関係構築の初期段階からセキュリティ要件を組み込むことが重要です。ゼロトラストアーキテクチャ、最小権限アクセス制御(必要最小限の権限のみ付与する仕組み)、脅威を継続監視する体制など、最新のセキュリティ対策を採用していることをベンダーに実証してもらう必要があります。
書面上の説明だけでなく、セキュリティテストを定期的に行うことを推奨します。ベンダーと共同で、脆弱性を特定するためのペネトレーションテストや、インシデント対応の有効性を確認する机上演習(TTX)を実施しましょう。
また、ベンダーのセキュリティテレメトリー(自動収集されるセキュリティデータやログ)が、自社のSIEM(セキュリティ情報とイベント管理:セキュリティアラートを収集・分析するシステム)およびGRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス:ポリシーや規制を管理するツール)に直接連携され、エコシステム全体の可視性を確保できるようにすることが重要です。
契約書には監査権を明記し、発見された脆弱性についてベンダーに確実な修正報告を求めます。
今後のAMS市場規模の成長についての予測
アジア太平洋地域がリードするグローバルAMS市場の拡大
アジア太平洋地域は、アプリケーションマネジメントサービスをはじめ、各種マネージドサービスにおいて、最も急成長している地域です。Grand View Researchによると、同地域のマネージドサービス市場は2025年から2030年にかけて年平均成長率15.1%で拡大し、2030年までに1,620億米ドルに達すると予測されています。特にクラウドマネージドサービス市場はさらに速いペースで成長し、年平均成長率18.7%で2030年には928億米ドルに達すると見込まれています。
成長を後押ししているのは、金融、通信、医療といった主要産業におけるデジタルトランスフォーメーションの加速です。企業はレジリエンス強化とモダナイゼーションを目指し、ノンコア業務やIT運用の外部委託を進めています。
アジア太平洋地域の中では、以下の市場が特に注目されています。
- 日本:企業が自動化とデジタル化により生産性向上を目指す中、マネージドサービスの採用が加速しています。
- オーストラリア:堅牢なクラウドインフラ需要を背景に、アプリケーションパフォーマンス管理市場が地域内で最も成長を見せています。
- 韓国:政府主導のデジタル化推進やAI戦略の加速を受け、クラウドマネージドサービス市場で最も高い成長率が見込まれています。
- シンガポール:スマート国家構想「Smart Nation」の推進により、公共・民間の双方でマネージドサービス需要が拡大しています。
これらの市場動向は、アジア太平洋地域全体が柔軟で拡張可能なIT運用モデルへと移行し続けていることを示しています。
技術進化と将来的な変革
急速な技術革新により、AMS市場は大きく変化しつつあります。AI主導の自動化、予測分析、セルフヒーリングシステム(人手を介さずに障害を自動検出・診断・修正する仕組み)は、標準的な機能として求められるようになります。
また、エッジコンピューティング、5G、ブロックチェーン、量子コンピューティングといった新興技術は、現在ではまだ黎明期ですが、将来的に新たなサービスカテゴリを生み出す可能性があります。
今後は新規参入者の増加とともに、ベンダー統合も進むでしょう。大手企業は、特定の分野に特化したベンダーを買収することで、デジタルトランスフォーメーションのサービスを拡充し、高品質な提供体制を維持していくと考えられます。
まとめ
アジア太平洋地域のテクノロジーリーダーにとって、AMS市場は大きな機会である一方、複雑な課題も伴っています。市場が年平均成長率18.4%で拡大し、AI主導の自動化がサービス提供を変革する中、成功の鍵となるのは、戦略的なベンダー選定、成果重視のパートナーシップ、そして先回り型のリスク管理です。コストはパフォーマンスに基づいて決定されるようになり、各地域の市場成熟度も異なるため、こうした市場動向を理解することが、技術投資効果の最大化につながります。今こそ、現在のアプリケーションマネジメント戦略を、これらの市場動向と照らし合わせて再評価すべき時です。今日の判断が、成長市場での優位性を築けるか、あるいは激化する競争に取り残されるかの分かれ目となります。
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