日本全国では依然として多くのレガシーシステムが稼働している状況により、今や「2025年の崖」は喫緊の課題になっています。 モダナイゼーション、すなわち レガシーモダナイゼーションは、デジタル化が進んでいる背景で競争力、俊敏性、革新性を維持しようとしている企業にとって、戦略的な必須事項として注目されています。
本記事では、 モダナイゼーションとは何かを解説し、マイグ レーションとモダナイゼーション の違いを明らかにすることで、企業が自社の状況に応じて最適なアプローチを選択できるようにサポートします。さらに、実際の事例を通じて、より深い理解と具体的なイメージをお届けします。
レガシーモダナイゼーション とは?
レガシーモダナイゼーション とは、わかりやすく言えば、既存の資産を活用しながら、レガシーシステム、時代遅れのプロセス、や数十年前の技術を最新のイノベーションを取り入れた最先端ソリューションに変革することです。
本記事で分析対象としているシステムは、主に1980年代のメインフレーム(大型汎用コンピュータ)やオフィスコンピュータ上で稼働する基幹システムです。これらのシステムは通常、独自のオペレーティングシステムを実行し、COBOLなどの言語で開発したアプリケーションを使用し、特定のビジネスニーズに対応してカスタムビルドされたものです。さらに、1990年代後半に導入されたオープンシステムも分析対象になることもあります。

経済産業省(METI)の調査によると、日本企業のの約80%がいまなおレガシーシステムを使用しており、そのうちの40%は、時代遅れのシステムを維持するためだけに予算の90%を費やしています。こうした状況を背景として、 レガシー モダナイゼーション を検討する企業が増加傾向にあります。しかしながら、マイグレーションと モダナイゼーション というアプローチや、それぞれの違いについて、多くの企業はまだ明確に理解していないのが現状です。
マイグ レーションと モダナイゼーション の違い
マイグレーションとは、データ、アプリケーションやシステムを多くの場合、その中核となる機能を変更することなく、ある環境から別の環境へ移行させるプロセスのことです。
一言で言えば、マイグレーションはシステムを新しい環境に移行しますが、必ずしもパフォーマンスの向上を保証するわけではありません。一方、 モダナイゼーション はシステムを再構築し、より良く、より速く、お客様の目標に沿った形へと進化させます。マイグレーションは「移行」で、 モダナイゼーション は「変換」です。両方を組み合わせることで、完全に最適化されたシステムが実現できます。
モダナイゼーション ・マイグレーションの進め方
モダナイゼーション には、以下の4つのプラクティスが最もよく知られています。
- リアーキテクチャ:拡張性やパフォーマンスなどの最新の要件を満たすためにアプリのアーキテクチャを再設計する。
- リビルド:システムを根本から新規開発して旧システムを完全に置き換える。
- リファクタリング:効率性と保守性を向上させるため、機能を変更せずに既存のソースコードを再構築する。
- リプレース:既存アプリを市販ソフトウェアに置き換える。

マイグレーションには、一般的に以下の3つのプラクティスがあります。
- リホスティング(「Lift-and-Shift」):大きな変更を行えずにアプリケーションやワークロードを新しい環境(クラウドなど)に移行する。
- リプラットフォーム:既存システムを少し調整・最低化しながら、新たなプラットフォームに移行する。
- データ移行:データベースアップグレードやクラウドへの移行など、あるシステムから別のシステムへデータを移行する。

モダナイゼーション とマイグレーション、どちらを選ぶべきか?
すべてのシステム、データやアプリケーションが完全なマイグレーション・ モダナイゼーション を必要とするとは限りません。オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドプラットフォームの普及は、「すべてに適用できる万能な解決策」がもはや存在しないことを示しています。どのアプローチを選ぶべきかは、現行のシステム環境、ビジネス要件、予算、そして優先順位に大きく左右されます。
マイグレーションを採用する場面
- 現行システムが全体として安定稼働している。
- 基幹業務プロセスが効率的に機能している。
- 短期間で技術基盤をアップグレードしたい。
- コストや時間(納期)の制約が大きい。
各プラクティスのメリットやデメリット、活用シーンについて、以下の表で詳しく説明します。
プラクティス | メリット | デメリット | 活用シーン |
リホスティング | ・短期間でクラウド移行可能 ・最小限の変更で対応可能 ・初期コストが比較的低い | ・パフォーマンスの向上は見込めない ・レガシーの課題が残る可能性がある ・最適化の余地が限られている | ・迅速な移行が求められている ・インフラコストの削減が目的 |
リプラットフォーム | ・わずかな改修でパフォーマンスを改善 ・クラウドの機能を活用可能 ・拡張性が向上 | ・リホスティングよりも複雑 ・変更対応に伴いコストが増加する可能性がある ・レガシーの制約が一部継続する可能性がある | ・一定のパフォーマンス向上を目指す ・クラウドの機能を活用したい ・効果が見込める適度な改修を求めている |
データ移行 | ・データ管理の効率化 ・データアクセス性の向上 ・複数のデータソースの統合 | ・移行中にデータ損失のリスクがある ・時間を要する ・綿密な計画・テストが必要 | ・複数のデータソースを統合したい ・新規データソースと統合したい |
モダナイゼーション を採用する場面
- 現行システムが複雑で柔軟性に欠けている。
- ビジネスに大規模な技術変革が求められている。
- 拡張性と俊敏性が不可欠。
- 既存アプリの仕組みでは変革が困難。
- 長期的なデジタル戦略には、抜本的な技術変革が必要
各プラクティスのメリットやデメリット、活用シーンについて、以下の表で詳しく説明します。
プラクティス | メリット | デメリット | 活用シーン |
リアーキテクチャ | ・パフォーマンスと拡張性の向上 ・現在のニーズに合わせてカスタマイズ可能 ・将来の変化にも対応可能 | ・開発に時間がかかり、コストの負担が大きい ・現行システムの構造に大幅な改修が必要 ・実装に高度なスキルを持つ人材が必要 | ・大幅な改善が求められている ・将来的な成長を見据えた最適化が求められる ・保守性の低下により負荷が増加している |
リビルド | ・完全な モダナイゼーション の実現 ・ベストプラクティスの導入が可能 ・レガシーの制約を効果的に解消可能 | ・多大なコストと時間を要する ・再設計には綿密な計画が必要 ・スコープ拡大のリスクがある | ・現行アプリが完全に時代遅れ ・新たなアプローチを検討している ・業務プロセスの刷新を求めている |
リファクタリング | ・ソースコードの保守性が向上 ・将来的な開発がより簡単 ・ソースコードの複雑さを軽減 | ・大幅なパフォーマンス改善は見込めない ・元の設計が一部残る可能性がある ・既存ソースコードの深い理解が必要 | ・古いソースコードを整理したい ・段階的な改善が必要 ・既存アプリを強化したい |
リプレース | ・レガシーシステムから完全に脱却 ・最新技術によるイノベーションの機会を提供 ・カスタムソリューションにより業務効率を大幅に向上 ・保守費用を削減 | ・コスト・リソース面での負担が大きい ・新しいシステムの導入に伴うリスクがある ・移行期間中に業務中断のリスクがある | ・包括的なシステム刷新を求めている ・社内で保守が対応できるIT人材が不足している |
システムを新しい環境へ移行しつつ、その環境下での最適な運用を実現したい場合、マイグレーションと モダナイゼーション を組み合わせて活用することができます。どの手法を採用するかは、企業ごとの課題やニーズに応じて判断する必要があります。
モダナイゼーション ・マイグレーションの活用事例のご紹介
VTIは、長年の実績を持つテクノロジー企業として、日本国内の多くのお客様の レガシーモダナイゼーション を支援してまいりました。マイグレーションおよび モダナイゼーション の理解をより深めていただくため、弊社実績の中から代表事例をご紹介します。
日本の大手小売企業向けのAWSクラウド移行
クラウドマイグレーションは現在、主要なトレンドとなっています。VTIは、多くのお客様と連携し、AWSなどのクラウドネイティブなプラットフォームへのデータ移行を支援してきたことを光栄に思います。本事例では、AWSの「6R戦略」を活用し、最新技術の利点を最大限に引き出してシステム移行を実現しました。

関連記事:日本の大手小売企業向けのAWSクラウド移行に関する成功事例のご紹介
レガシーシステムをSAP S/4 HANAに刷新
旧式のSAPソフトウェアは2027年以降サポートが終了するため、ビジネスの円滑な運営を維持するには、SAP S/4 HANAに移行する必要があります。しかし、レガシーシステムを新しいものに置き換えるには、綿密な計画と効果的なチェンジマネジメントが求められ、移行をスムーズに進めるための取り組みが重要です。VTIは長年の経験を活かし、数多くの企業がスムーズに移行できるよう支援してきました。これにより、運用の中断を防ぎ、ストレスフリーな体験を実現できました。
関連記事:SAP S/4 HANAおよびFIORIの導入:システム モダナイゼーション の鍵
マイグレーションの課題への対応
レガシーシステムが時代遅れとなり、拡張性にも限界が見え始めたとき、新たなプラットフォームへの移行は避けて通れません。データ、プラットフォーム、インフラなど、移行対象はさまざまです。
VTIは、韓国のセキュリティ企業と協業し、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)をよりモダンなプラットフォームへ移行するプロジェクトに取り組みました。この案件は難易度が非常に高いものでした。既存のレガシーシステムは、元のベンダーによるサポートが終了しており、新しいプラットフォームは全く異なるアーキテクチャと技術要件を導入していたため、完全な再構築が必要になりました。
VTIはこの複雑なマイグレーション課題をどのように乗り越えたのか、詳しくはこちらでご覧ください。
まとめ
本記事では、 モダナイゼーション の概要を説明し、マイグレーションとの主な違いや、それぞれを選択すべき場面について解説しました。あわせて、理解を深めていただくために、具体的な事例も紹介しました。最適な手法を選ぶには、企業のニーズや予算、戦略的なビジョンを総合的に考慮する必要があります。コスト面での大きなリスクを回避するためにも、経験豊富な専門家への相談が重要です。
レガシーモダナイゼーション は、困難でコストがかかる一方、緊急性の高い取り組みです。そのため、適切なパートナーを選ぶことが成功のカギとなります。VTIはベトナムのアウトソーシング企業トップ10に名を重ねる企業です。日本企業との豊富な取引実績を背景に、高度な専門知識、コストパフォーマンスに優れたソリューション、そしてスキルの高い人材を提供し、企業の レガシーモダナイゼーション を力強く支援しています。
現行システムの評価から最適なソリューションの提供に至るまで、お客様のレガシーシステムの変革を導き、持続可能な成長と長期的な成功への道を切り拓きます。
レガシーシステム脱却への第一歩をお考えの方、今すぐお気軽にお問い合わせください。