「無料EBOOK」AI時代におけるオフショア開発実践ガイド
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ニアショア開発とは?コストとコミュニケーション両立の開発手法

4月 10, 2023

オフショア開発のコスト効率とオンショア開発のコミュニケーション品質、この両方の利点を兼ね備えた開発手法として注目されているのが「 ニアショア開発 」です。

地理的な近さを活かすことで、時差の少なさや言語・文化的親和性といったメリットを提供します。

しかし一方で、オフショア開発ほど豊富な人材プールがないことや、交通費の増加といったデメリットも存在するのが現実です。さらに、ニアショア開発では専属チーム・プロジェクトベース・スタッフ増強という3つのエンゲージメントモデルを選択でき、プロジェクトの規模や性質に応じた柔軟な協働が可能となっています。

では、nearshore意味、そしてあなたのプロジェクトに適しているか、さらに成功させるためのポイントと注意点について、詳しく見ていきましょう。

ニアショア開発とは?

「ニアショア」は、英語の”Nearshore”に由来する言葉です。「Nearshore」は、「近い」を意味する”near”と、「岸・沿岸」を意味する”shore”を組み合わせた言葉です。

ニアショア開発とは、自社から地理的に近い他国の企業や、国内の遠隔地にシステムやソフトウェアの開発を委託するモデルを指します。

つまり、ニアショアとは、国境を越えるかどうかにかかわらず、企業の拠点から物理的な距離が近い場所であれば、どこでも当てはまる概念です。

例えば、中国企業がベトナム企業に開発を委託することもニアショアと見なされます。

国内の例としては、東京に本社を置く企業が、福岡の企業に開発を委託する場合もニアショアと呼ばれます。

ニアショア開発・オンショア開発・オフショア開発の比較

ニアショア開発を深く理解するには、オンショア開発やオフショア開発との違いを明確にすることが不可欠です。これらの開発モデルはそれぞれ異なる特徴を持つため、最適な選択肢はプロジェクトの性質や企業のニーズによって異なります。

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オンショア・ニアショア開発の比較

オンショア開発とは、自社と同じ国内で活躍している企業に委託することです。例として、日本企業が新しいプラットフォームを構築したい場合、ITサービスを提供する他の日本企業と協力することが挙げられます。

オンショア開発の特徴:

  • 言語の壁が存在せず、スムーズなコミュニケーションが可能
  • エンジニアの現場が自社から近く、直接相談や対面でのミーティングが容易
  • 同じ法規制や商習慣の下で運営されるため、契約や品質管理が明確
  • しかし、日本のような先進国では高い人件費により開発コストが高額になる。

ニアショア・オフショアの比較

オフショア開発とは、遠く離れた国の信頼できる企業にアウトソーシングすることです。最大のメリットは費用対効果の高さであり、大幅なコスト削減を実現できます。

オフショア開発が適している場面:

  • コストを大幅に削減したいプロジェクト
  • 高度な経験と大規模なリソースを要する、複雑なプロジェクト
  • 長期間にわたる開発で、専門的なスキルを持つ大規模チームが必要な案件

ニアショア開発が優位な場面: 

一方、ニアショア開発は以下の特徴を持つプロジェクトに適しています:

  • 小規模から中規模で、密接なコミュニケーションを重視するプロジェクト
  • 頻繁な仕様変更や迅速な意思決定が求められるアジャイル開発
  • 高度な専門スキルよりも、柔軟性と対応力を重視する案件
  • オフショア開発ほど大きなリソースを必要としないが、オンショア開発では予算が合わないプロジェクト

マルチソースアウトソーシングという選択肢

現代の複雑なIT開発では、マルチソースアウトソーシングという手法も注目されています。これは、上記で述べた複数のモデルを組み合わせることで、各モデルの長所を活かす戦略的なアプローチです。

実践例: 日本企業がモバイルアプリを開発する場合を考えてみましょう。

  • オフショア:ベトナムのIT企業からメインの開発チームを調達(コスト効率重視)
  • ニアショア:韓国や台湾からUX/UIデザイナーを契約(品質とコミュニケーション重視)
  • オンショア:国内企業でプロジェクトマネジメントと最終的な品質保証を実施(管理とリスク軽減)

このような組み合わせにより、コスト効率性開発品質プロジェクト管理の確実性をバランスよく実現することが可能になります。

まとめ:最適なモデルの選択基準

各開発モデルの選択は、以下の要素を総合的に検討して決定すべきです:

予算制約:オフショア < ニアショア < オンショア

コミュニケーション重要度:オンショア > ニアショア > オフショア

プロジェクト規模・複雑さ

  • 大規模・複雑 → オフショア
  • 小中規模 → ニアショア

管理・統制の必要性

  • 高い → オンショア・ニアショア
  • 標準的 → オフショア

重要なのは、単一のモデルに固執するのではなく、プロジェクトの特性と企業の状況に応じて最適な組み合わせを選択することです。

ニアショアのメリットは?

ニアショア開発の概要を理解した上で、その利点をより詳しく見ていきましょうか。

1. 言語や文化の壁はほとんどない

ニアショア開発メリットの一つは、コミュニケーションと文化の面で大きな利点があることです。同じ国内の遠隔地や国境に近い他国の企業と協力することで、コミュニケーションが円滑になり、文化的な違いによる誤解も防ぐことができます。

例えば、東京の企業が北海道の企業にIT業務を委託するニアショア開発では、言語や文化の壁がないため、ビジネスの進め方を簡単に統一できます。これにより、何か問題が発生した場合でも、すぐに話し合って解決することが可能です。

2. 時間差はない

仮に開発チーム会いたい時に、一時間のフライトだけでかかったら、いつも開発チームに会えるでしょう。実際に、チームと顔を合わせて話す必要がある場合もあります。その場合にはニアショア開発はすごく便利です。

それだけではなく、両方(依頼者と委託先)が同国で営業しているために、時間差はほとんどないです。情報のアップデートや交換をリアルタイムで行うことができます。

3. コスト削減 

アウトソーシングされたチームと協力することは、自社で人材を雇用するよりもはるかに費用対効果が高いというニアショア開発メリットがあります。特に、国や地域間の経済格差は大きな利点となります。

具体的には、低価格で同じレベルの技術専門知識を得られるため、より早く投資収益率(ROI)を向上させることができます。また、2023年のデータによると、東京都の平均年収は約471万円であり、地方部(関東以外を含む地域)の平均年収は380万円前後とされ、都市部と地方でおよそ90万円、つまり約20%の格差があります。

4. 採用のボトルネックはない

プロジェクトの要件に合った経験豊富な開発者を採用するために何ヶ月も費やす必要はありません。 委託先は、人材プールから必要な専門家を提供できます。

5. プロジェクトの迅速な提供 

最後のニアショア開発メリットは、人材の採用と知識の移転を迅速に行えるため、開発者がより早くプロジェクトを開始できる点です。 これにより、よりスムーズで高速なソフトウェア開発ライフサイクル (SDLC) と、プロジェクトのマイルストーンの迅速な提供が可能になります。

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ニアショア開発デメリット

1. オフショア開発より優秀な人材が少ない

ニアショア開発のデメリットの一つは、都市部より人件費が安い反面、オフショア開発に比べて経験豊富な人材が少ないことです。優秀な人材は都市へ仕事を探しに行く傾向がありますので、地方の企業でハイスキルなエンジニアの数は少ないです。そこで、ある意味で、オフショアと比べるとリソースの量を確保することは難しいです。

2. 利便性が低い可能

場合によっては、異なる場所にいるチームが一緒に作業するのはあまり便利ではありません。 たとえば、ソフトウェア開発のアウトソーシングでは、迅速な対応とトラブルシューティングが必要な展開時に、異なる場所にいる2人の担当者が協力して高品質のソフトウェア製品を提供することは現実的ではない場合があります。経験が少ない委託先の場合、そういう問題に遭遇する可能性が高いです。

3. 交通費が高くなる可能

上記に話したように、ニアショア開発を活用することで、顔を合わせて話したら、交通費が発生します。多くの場合、交通費が30%ぐらいを占めるほど高くなるために、きちんと検討しなければなりません。

4. ニアショア開発のエンジニア単価

基本的に、都市圏と比べて地方(ニアショア)に委託する方が費用が抑えられるため、コスト削減につながると期待されています。

ソフトウェアエンジニアの市場を例に挙げると、2025年時点の国内人月単価はスキルレベルによって幅があり、初級で約60万〜100万円、中級で80万〜120万円、上級では100万〜160万円に達するケースもあります。その中で、2025年のニアショア開発の平均単価は約87万円となっており、首都圏相場(約116万円)と比べて25%程度のコスト削減が可能です。

しかし、2024年調査のオフショア開発単価では、ベトナムのエンジニア人月はおおよそ25万〜40万円(平均39.4万円)となっており、日本国内に比べて圧倒的に費用対効果が高い水準になっています。

ニアショア開発のエンゲージメントモデル

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ニアショア開発には、それぞれ異なる特徴を持つ複数の一般的なエンゲージメントモデルがあります。これらのモデルは、プロジェクトの性質や予算、管理体制に合わせて使い分けることで、ニアショア開発のメリットを最大限に引き出すことができます。

専属チームモデル(Dedicated Team Model)

専属チームモデルとは、クライアントのプロジェクトに専念する開発者チームを雇用する形です。このモデルでは、ソフトウェアエンジニア、プロジェクトマネージャー、品質保証担当者など、プロジェクトの成功に必要なすべての要素を専属チームが持っています。

ニアショア開発の場合、ODC(オフショア開発センター)と同様の特徴を持ちますが、地理的な近さにより以下の違いがあります。

  • 時差が少ないため、リアルタイムでのコミュニケーションが取りやすい
  • 必要に応じて現地への出張や対面での相談が比較的容易
  • 文化的な違いが少なく、ビジネス慣行の理解が深い

このモデルは高い統制力を提供し、長期プロジェクトや社内チームを迅速にスケールアップしたい企業に最適です。本質的に、専属チームは企業のIT部門の延長として機能します。ニアショア運用支援もこのモデルに含まれ、システムの開発から運用・保守まで一貫して任せることができます

プロジェクトベースモデル(Project-Based Model)

プロジェクトベースモデルとは、明確な要件と納期が定められた単発のプロジェクトを委託するモデルです。ゼロから製品を開発したいが、長期的なコミットメントは避けたいと考える企業に最適です。

ニアショア開発におけるこのモデルの利点は、オフショア開発と比べてコミュニケーションが円滑な点です。

  • 時差が少ないため、進捗確認や仕様変更の相談がスムーズに行えます。
  • 品質管理や検収プロセスにおいても、直接的な対話が可能です。
  • 問題発生時には、迅速な対応とサポートが期待できます。

このモデルは、開発後のニアショア運用支援と組み合わせることで、さらにその価値を高めることができます。オンショア開発よりもコストを抑えつつ、オフショア開発より管理しやすいのが大きな特徴です。最終的な目標は、契約に基づいた成果物を完成・納品することにあります。

スタッフ増強モデル(Staff Augmentation Model)

スタッフ増強モデル(Staff Augmentation Model)

スタッフ増強モデルは、既存の社内チームの「ギャップを埋める」ための有効な手段です。このモデルでは、ニアショアのエンジニアやチームがクライアントのチームに加わり、特定のスキルや処理能力を補強します。

このモデルにおけるニアショア開発の独自性は以下の点にあります。

  • 社内チームとのスムーズな協働と一体感の構築
  • オンサイトとリモートを柔軟に組み合わせられる勤務形態
  • 短期間での人材の投入・撤退が比較的容易

常勤社員を雇用する代わりに、ニアショア開発プロバイダーと契約して一時的に人材を確保することで、社内チームの不足している部分を補うことができます。参画するメンバーは、自社(リモート)またはクライアント企業(オンサイト)で働くことが可能で、地理的な近さがどちらの選択肢も容易にします。

アウトソーシング契約が成立すると、彼らはクライアント企業の一員として業務を遂行し、チームとの円滑な連携が求められます。このモデルでは、プロジェクトの目的や要件を満たす適切なスキルと経験を持つ人材を選ぶことが、クライアント側の責任となります。

ニアショア開発を展開する注意点

企業の業界に関する活用事例がある企業の方がいい

ニアショア開発サービスを提供する企業を選択する時に、自社の課題に似た活用事例がある企業を選んだほうがいいです。その企業は自社の課題を理解できるし、自社の業界のノウハウを持って最適なソリューションを提供できます。もちろん、同様の問題に対処する経験豊富な企業を常に見つけることができるとは限りません。その場合では、自社の業界に関する経験が深い企業を優先してください。彼らは業界の特徴、そして顧客行動を理解できるために、自社に合わせたソリューションを提供する可能性が高いのではないでしょうか。

委託先の比較検討を行う

候補の企業をある程度絞り込んだ後、それぞれの料金やプランなどを比較検討しましょう。それは、市場の単価を把握して、自社の予算に合わせた最適なソリューションを提供する企業を選定するのに役立ちます。

ニアショアソフトウェア開発で有名な企業は?

株式会社VTIは、製造、小売、金融をはじめとした多岐にわたる業界において、大企業からスタートアップまで、あらゆる規模の企業様のソフトウェア開発、自動化実装、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。AIやクラウドといった最先端のテクノロジーを駆使し、お客様の課題解決とビジネス成長に貢献します。

VTIの柔軟な開発サービス:オフショア、ニアショア、オンショア

VTIは、ベトナム、日本、韓国、シンガポールに計8拠点を構え、お客様のニーズに合わせて最適な開発モデルをご提案します。

  • オフショア開発: ベトナムのホーチミンやハノイの拠点を活用し、コスト効率の高い開発を実現します。
  • ニアショア開発: 福岡の拠点が、日本の企業との密な連携を可能にし、コミュニケーションの質を確保します。
  • オンショア開発: 東京の拠点を中心に、対面での綿密なコミュニケーションを通じてお客様の課題を解決します。

VTIは、AWS、MicrosoftMagentoOdooServiceNowSalesforceといった世界的なプラットフォームの公式パートナーとして認定されています。また、ISO 27001、プライバシーマーク(Pマーク)、CMMIレベル3などの国際認証も取得済みです。

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