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「小売」POSシステムを強化するAI

3月 25, 2025
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POSシステムは小売業において、トランザクションの最適化とレジでの待ち時間の短縮を支援する重要なツールです。さらにAI技術を活用することで、POSシステムは従来の単なる決済端末を超える存在となりました。機械学習により、AIはPOSシステムのパフォーマンスを50%以上向上させ、業務効率やデータ活用を最適化し、顧客行動、在庫管理およびセキュリティに関する貴重なインサイトを提供します。​

 

1.POSシステムと、AIを活用するPOSシステム

POSシステムは、現金、クレジットカード、デビットカードなどによる取引を処理する、デジタルレジとしての役割を担っています。従来のPOSシステム(物理的なデバイス、Web決済(Web POS)、モバイルPOSなど)と比べて、AI搭載のPOSソリューションはより高度に進化しています。

最新のPOSソフトウェアは、在庫管理、購買(調達)履歴の追跡、価格設定の精度管理、マーケティング用のデータ収集など、さまざまな業務を支援します。さらに、AIや機械学習(ML)の導入は、取引時間の短縮やデータ収集の強化に貢献し、業務全体の最適化を実現することができます。2021年の調査によると、米国企業の15%がAI POSシステムをすでに導入しており、40%が翌年中の導入を計画していると回答しました。また、Mordor Intelligenceのレポートによれば、小売業におけるAIの市場規模は2025年には130.7億ドルで、2030年には537.4億ドルに達すると予測されています。

POSベンダー各社は、AI技術の導入を牽引する存在の一つです。AIの活用により、POSシステムは今や多くの企業にとって、より有益で価値ある選択肢となりつつあります。

 

2. POSシステムの構成

2.1. ソフトウェア

POSソフトウェアは大きく分けて、サーバーベースとクラウドベースがあり、パソコンPOS、タブレット上のWeb POS、モバイルPOSなど、さまざまなデバイスに対応可能です。それぞれの分類には長所と短所があり、企業は自社の要件やニーズに応じて、最適なソリューションを選ぶことができます。

サーバーベース

メリットデメリット
  • 月額料金なし:データがローカル環境で管理されるため、継続的な費用は発生しない。
  • インターネット不要:インターネット接続なしでも、スムーズに取引を継続できる。
  • 高いカスタマイズ性:企業がデータベースへのデータ入力やシステム設計を自由にコントロールできる。
  • 導入の複雑さ:ハードウェアおよびソフトウェアの初期設定に高度な人材が必要で、コストが高い。
  • リモートアクセスの制限:クラウド機能を備えていない場合、データが店舗内のターミナルからしかアクセスできない。
  • 低い拡張性:各ターミナル(サーバーデバイス)ごとに個別の保守が必要になり、メンテナンスおよびアップデートのたび、リソース負荷が増加する。
  • データ損失のリスク:外部バックアップがない場合、盗難や災害によりデータが失われる可能性がある。

クラウドベース

メリットデメリット
  • リモートアクセス可能:データがクラウド上で保存され、どこでもアクセスできる。
  • 高い拡張性:メンテナンス、アップデート、拡張などは、ターミナルを経由せずリモートで対応可能。
  • 初期費用の低さ:物理サーバーでのデータ管理が不要なため、導入時のコストが抑えられる。
  • 導入の簡単さ:ベンダーがリモートで設置・保守作業を支援・管理可能
  • ランニングコスト:初期費用は削減できる一方、SaaS型のクラウドベースPOSシステムでは、サービス料金は月額または年額で発生する。
  • カスタマイズ性の制限:ソフトウェアの機能とアップデートは基本的に、クラウドベンダーによって管理される。
  • インターネット依存:データがすべてクラウドで保存されているため、POSシステムにアクセスするには、安定したインターネット接続が必要。

2.2. ハードウェア

企業は、長期的な目標と予算状況に応じて、ハードウェアの購入するか、借りるかを選択することができます。ただし、サーバーベースのシステムにするか、クラウドベースのiPad POSシステムを採用するかについては、慎重に検討する必要があります。例えば、iPad POSを導入する場合、カウンター周りのスペースを有効活用できるだけではなく、持ち運びが可能なため柔軟な対応が可能になります。さらに、特定のビジネスニーズに応じて、バーコードスキャナー、セルフ POS レジ、キャッシュドロア、クレジットカード決済端末などの機器も導入する場合もあります。

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3. AI POSシステムのメリット

3.1. データ分析

小売業では、日々膨大な取引データが生成され、POSシステムには商品の種類や数量、購入時間、価格、顧客の嗜好など、さまざまな情報が登録されています。AI搭載の機械学習モデルを活用してこれらのデータを分析することで、小売企業が需要予測、顧客満足度の向上や在庫管理の最適化を実現できます。

3.2. 顧客の行動と嗜好の分析

AI POSシステムは、顧客の購買行動を分析して、販売トレンドの把握、ダイナミックプライシング(最適な価格の提案)、リアルタイムの需要に応じたプロモーションの提案を可能にします。POS端末のデータ管理にAIを活用することで、カメラやセンサーを通じてリアルタイムで顧客行動や店舗のデータを把握し、アップセル戦略を改善することができます。つまり、AI POSシステムは「顧客のペルソナ」を把握することで、パーソナライズされた商品提案やロイヤルティプログラム、プロモーションを提供し、顧客エンゲージメントの向上、リピート率の増加、そして売上アップにつながります。

3.3. 不正防止とセキュリティ強化

AIは不審な取引パターンを自動で検出し、不正行為の疑いがある場合にアラートで通知することなど、POSシステムのセキュリティ強化に大きく貢献します。また、高度な不正検出アルゴリズムは、過去の取引履歴を分析することで、リスクを減らし、安全でスピーディーな決済システムを実現しながらPOSソフトウェア内のデータ保護を強化します。これにより、長期的には運用コストの削減と企業の信頼性および認知度の向上にもつながります。

3.4. 在庫管理の自動化 

AI POSシステムは、在庫管理を自動化し、適正在庫の維持や、在庫過剰・欠品のリスクを軽減します。AIは過去の販売データや市場のトレンドをもとに、需要を予測し、最適な在庫補充を実現することができます。

>> 関連記事:クラウドベース調達管理システムにより、コストを6分の1に削減し、在庫管理をスマート化

3.5. レイアウトの最適化

AIは膨大なデータを分析することができます。それらのデータは販売・販促、在庫管理を支援するだけではなく、店舗のレイアウトの最適化にも活用できます。顧客の性別・年齢・購入時間帯などの属性を分析することで、棚の配置や店舗レイアウトを最も効果的に設計できます。

例えば、AIにより「会社員は朝にメロンパンなどの軽食を購入し、夕方に仕事が終わったらビールなどのアルコール飲料を購入する傾向にある」といった購買パターンを把握した場合、店員はその情報をもとに、朝にレジ付近に菓子パンを、夕方に入口近くの目立つ場所にアルコール飲料を配置するような販売戦略を展開することができます。これは、顧客満足度を高めるだけではなく、レジでの会計プロセスを効率化し、店舗全体の運営効率の向上に貢献します。

 

4. POSシステムを強化するテクノロジー

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  • 顔認識技術:顔認識システムにより、企業は顧客の性別・年齢・購入履歴などの情報を収集することができます。AI搭載の顔認識をPOSシステムに統合することで、パーソナライズされたプロモーションやサービスの提供が可能になり、顧客体験の向上につながります。
  • 予測分析:予測分析の機能を組み込んだAI POSシステムは、顧客属性などのデータを分析して今後の需要を予測することで、在庫管理を最適化し、効率的な仕入や補充を実現します。
  • IoTセンサー:IoTセンサーを搭載したスマートなPOSシステムは、リアルタイムで顧客行動や在庫状況を監視できます。これにより、ピークタイムの長い待ち時間といった課題を解消し、効率的な商品提供を実現できます。

 

専門家と協力して、AIの力で小売業務を次のステップへ

AI POSシステムは、業務効率、セキュリティや顧客エンゲージメントの向上を通じて、小売業界の進化を加速させています。AIをPOSに取り入れることで、企業は高度なデータ分析、自動化された在庫管理、パーソナライズされた顧客体験を実現し、競争優位を確立することができます。また、パソコンPOS、Web POS、オンラインPOSなど、いずれの形態であっても、AIとの連携により、業務プロセスの最適化とデータドリブンな意思決定を可能にします。技術の進化に伴い、AI搭載のPOSソリューションは今後、業界の標準となり、小売業者の業務効率と収益性の最大化に貢献していくと考えられます。

VTIは、自社中核技術トップ3の一つであるAIと、小売業界における豊富な知見と経験を活用することで、ビジネスの成長を加速させる最先端で最適なソリューションをご提供しています。 

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